トンボ鉛筆100年史 page 41/98

トンボ鉛筆100年史

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トンボ鉛筆100年史

への進学熱が高まっていた。親たちは、よい工業高校へ、著名大学の理工学部合格の祈りを込めて、わが子に「HOMO」を買い与えたのである。鉛筆は、戦後まもないころのように、もはや、書けさえすればいいというものではなかった。何よりも書き味のよさ、品質が求められるようになっていたのである。終戦から10年近くが経ち、「HOMO」は、よりよいものを求めはじめた国民的な要求、高揚感を、よくとらえた鉛筆に育ったのだった。「MONO」ブランドのはじまりMONOオグレスビー社製溝付け機1963年8月、最高級鉛筆「MONO」が登場した。本来であれば、「HOMO」ブランドの新製品となるはずだったが、とくに海外市場で、「HOMO」というネーミングが“ホモセクシャル”を連想させるとの指摘を多く受けていた。悩んだ末、新製品から、「MONO」に改めたのである。命名したのは、技術顧問、東京大学の赤松教授だった。「MONO」は、「唯一の、無類の」といった意味のギリシャ語[MONOS]に由来する。「HOMO」の語感を残しながら、アルファベット4文字で、先進的で個性的、かつ誠実さがイメージされることから、この名前に決まった。商標「MONO」の文具における権利は、時間を経て、完全にトンボ鉛筆が取得しているが、自動車やファッション、TV・雑誌などでも盛んに使われるようになっている。その点でも、「MONO」は、ネーミングの名作といえよう。書き味がなめらか、芯強度が高く折れにくい、筆記線が濃い、筆跡が拡散しない、消しゴムできれいに消える、など、あらゆる点で、「MONO」は従来品を凌駕していた。その進歩の技術的背景は、「1ミリ立方に80億個の粒子を持つ」というキャッチフレーズどおり、「粒子が細かく、密度が高い」ためだった。原料は世界の最高級原料を厳選して用い、加工においても独自の精密装置を開発したのである。鉛筆「MONO」は、その後、鉛筆「MONO100」(1967年発売)に進化する。鉛筆から始まった「MONO」ブランドは、消しゴムや修正テープ、ボールペン、シャープ芯などに翼を広げ、数々のヒットを量産している。41トンボ鉛筆100年史